育成の記録 松添編(4)
『擁壁工事 完成編』
こんにちは、松添です。前回に引き続き、今回は打設~完成までです。今回は最後に完成写真も掲載していますので楽しみにしていてください。では今回も新人の視点で、土木の面白さを交えながらレポートをしていきます!
コンクリートの打設工事
大変だった型枠も終わり、いよいよ打設です。
これは型枠の中にコンクリートを流し込む工事なのですが、ここでまず未経験の方が気になるのが「なぜ“打設”というのか?」ということではないでしょうか。
少し昔に遡ると、当時の工法は“人の手で叩いたり棒で突いたりしてコンクリートを詰めていく作業”でした。「打って」その位置に「設ける」。この二つの意味から“打設”という言葉が生まれたそうです。
そして何より、この工事で大事なのは“コンクリートを打ち固める動作こそが重要”という点。
その本質が今も昔も変わらないからこそ、「打設」という言葉が今も使われ続けているのです。
つまり、流せば終わりではありません。

打設では、ポンプ車によって型枠の中にコンクリートが次々と流し込まれていきます。
ここで求められるのはチームワークとスピード。
ご存知のようにコンクリートは時間が経つと固まります。気温や日差し、コンクリートの柔らかさ(スランプ)などを見極めながら、絶妙なペースで作業を進めていきます。
この現場で私は、先輩が扱うバイブレーターのコードを持つという役割を担当しました。
バイブレーターとは、コンクリートに振動を与えて空気を抜き、密度を高めるための道具です。
一見簡単そうに見えますが、実際にやってみると“未知の領域”。
振動の伝わり方も、空気の抜け具合も、すべてが感覚の世界です。
自由にコントロールするのも、空気が多そうな箇所を見つけるのも、まさに職人技だと感じました。
型枠のバラシ
コンクリートが固まり、いよいよ型枠を外す工程です。
図面でしか見たことのなかった高さ4mの擁壁が、ついに目の前にその姿を現します。
初めてのバラシ作業ということもあり、作業前は正直ドキドキでした。
しかし、いざ始まるとそんな余裕はありません。
一つひとつの動きに集中しながら、先輩方の動きを追っていくのに精一杯です。
ここで皆さんに伝えたいのは――単純作業ほど職人の技量の差が出るということ。
バラシ作業の中でいえば、「釘を抜く」この動作がまさにそうです。
一回でスッと抜けるか、何度もやり直すか。
この差はほんの少しの手の角度や力の入れ具合で決まります。
焦る気持ちを抑えながら、頭に浮かんだのは専務からいただいた言葉、
「丁寧に。」
その一言に救われながら、置いていかれないよう一所懸命に取り組みました。
釘抜きのコツ
釘抜きは「テコの原理」を使います。
日報にも書いたのですが、どの角度で金槌を入れるかがポイント。
コツをつかめば、「スコッ」と抜けて本当に気持ちがいい瞬間があります。
余談ですが、土木の仕事には“気持ちいい瞬間”がたくさんあります。
この感覚は現場でしか味わえないもの。
これから少しずつ、その“気持ちいいポイント”も紹介していけたらと思います。
ケレン作業
型枠が外れました。
パネルに使っていた桟木やベニヤ、セパ、フォームタイなど、外した部材の量は想像以上。
次の現場でもすぐに使えるように、一つひとつを丁寧にまとめ、片付けていきます。
ここからはケレン作業です。
仕上がりの美しさが特長の赤木組にとっても、大切な工程のひとつ。
打設後、型枠を外した際にコンクリートや鉄に付着した汚れ、バリ、サビなどを取り除いていきます。
この作業にも“気持ちいいポイント”が潜んでいます。
削る際に上手くバリの下へ滑り込ませることができれば、「ペリッ」と一発でキレイにはがれる。
この瞬間が本当に気持ちいいんです。
ここでも(先輩)職人との技術の差を感じながら、ほんのひと時の快感を楽しみつつ、遅れないように真剣に取り組みました。
「ここまでキレイにするのか」「そしてここまでキレイになるのか」――その両方を実感しながら、いよいよ感動の4mの擁壁がお目見えです。
翌日。


早朝の現場で見たこの擁壁の姿を、僕は一生忘れないと思います。
一言でいうと――息をのむほど美しい建造物でした。
これが、図面が形になった時の感動なのか。
胸の奥からじんわりとこみ上げてくる達成感に、ただ立ち尽くすしかありませんでした。
そして、この擁壁がこれから地域の皆さんを支えることになる。
自然の中に静かにたたずむその姿は、まさに“絶景”。
土木の面白さと奥深さを、またひとつ実感することができました。
埋め戻し
いよいよ埋め戻し作業が始まります。
思う存分その全貌を堪能した擁壁に、ゆっくりと土を戻していきます。
擁壁は“土圧”によって支えられている構造です。
そのため、背面にできた空間(裏込め部)に土や砕石を決められた順番で入れ、一定の高さごとに締め固めながら強度と耐久性を高めていきます。
僕はこの工程で、土や砕石の高さを決めるポイント出しと、バックホウでの積み込み・ダンプへの運搬作業を担当しました。
ダンプに土を積む作業は、入社当初から繰り返し練習してきたこと。
最近はかなり上達してきていて、今回は見事にキレイに積むことができました。
見てください。専務にも褒めてもらいました(^^)


結構キレイに積めていませんか?
ここでも改めて、先輩方のすごさを感じました。
バックホウの操作技術です。
まるで自分の腕のように操縦され、機体の傾きや水平まで体で感じ取っているとのこと。
その姿はまさに機械と一体化している職人技。
この光景を目に焼き付け、自分もいつかあのレベルに到達したいと強く思いました。
完成
ついに完成です。
図面を照らし合わせると、感動もひとしおでした。
これまでも「土木ってスゴイな」と感じる場面はたくさんありましたが、今回の擁壁工事は今までで一番“スゲエ”と感じました。
こんな大自然の中で、図面を追いながらチームワークと創意工夫で形にしていく――
こんなことができるのは、土木の仕事だけではないかと思います。
そして、この建造物が本領を発揮するのはこれからです。
地元の皆さんの暮らしがより便利に、より快適になるように、この擁壁が支え、守ってくれる。
土木はまさに、ロマンのある仕事だと改めて感じました。

これから舗装を行い、最終工程へと進みます。
3回にわたってご紹介した擁壁工事の記録は、ひとまずここで一区切りです。
専務からは、図面を見ながら振り返りを行うようにとアドバイスをいただいています。
それもまた次への楽しみです。
本当に良い経験をさせていただいています。これからも頑張ります!
上司アドバイス
振り返りの際には、自分がどんなことをしてきたかを具体的に思い出しながら、
「どこがうまくいったのか」「どこがうまくいかなかったのか」を明確にしてみてください。そうすれば、次につながるポイントが見えてきます。
そして、それを繰り返していくうちに、自然と“見るべきポイント”が変わっていくはずです。これはずっと変わらない大切なことなので、ぜひ習慣にしてください。
まだ舗装工事が残っていますので、引き続き気を引き締めて安全第一で頑張りましょう!
