育成の記録 松添編(15)
『1年半後』
9月に入った現場は、僕が入社してすぐに携わった現場と、施工内容がよく似ていました。そのため、自分がこの1年半でどれくらい成長できたのかを振り返る、よい機会になりました。
今回のブログでは、その現場で感じた自分の成長を中心に書かせていただきます。最後までお付き合いいただければ嬉しいです。
落ち着いて丁寧に
まずは、型枠づくりの振り返りからです。
当時の自分を思い返すと、道具の名前も分からず、次の工程どころか、次に何をすればよいのかも分からない状態でした。そんな自分を支えてくれたのが、専務から言っていただいた「落ち着いて、丁寧にやること」という言葉でした。
もちろん、「落ち着いて、丁寧に」は、今でもどんな作業をするときにも一番大切にしています。このときにいただいた言葉があったからこそ、一つひとつの作業や工程を意識しながら、技術の向上を目指して取り組めているのだと思います。
型枠づくりで言えば、釘打ちもその一つです。力の入れ方や釘を打つ角度、体の動かし方など、一つひとつを丁寧に行うからこそ、「コーン、コン」とたった2回で当たり前のようにきれいに釘が収まります。
きれいにできるようになると、作業も早くなる。今は「きれい=早い」ということを実感しています。
「落ち着いて丁寧に」が、先読みにつながる
当時の僕は、「丁寧に、落ち着いて」と「先読み」は、別々のことだと思っていました。しかし今は、どちらかを意識することで、もう一方の質も高まることが分かります。
先読みとは、いわば段取りです。次に何をするのかが分かっていれば、焦らず、丁寧に作業できます。反対に、一つひとつの作業に落ち着いて取り組むことで、次の工程を考える余裕も生まれます。
赤木組の日報には、行動指針を記入する項目があります。その中に「ゴール(竣工)を見据えて行動した」「利益を追求する意識を持って取り組んだ」という項目があります。一見すると、新人にはまだ関係のないことのように思えますが、決してそんなことはありません。
常に目的を持って仕事をすることで、最終的なゴールである竣工までは見通せなくても、今取り組んでいる工程のゴールは意識できます。ゴールが分かれば、今の作業を進めながら、次の準備にも目を向けられます。
こうした小さな意識の積み重ねによって、仕事の質が格段に変わるところも、土木の面白さだと思います。
今回の型枠づくりでは、事前に必要な資材を等間隔に置いていきました。実際に作業する人の動きをイメージできるようになったからこそ、資材を置く場所や向き、間隔まで意識して準備することができました。

現場の様子です。撮影は僕の後輩社員です。
専務の言葉
9月の面談で、専務が僕たちに教えてくれた言葉があります。
「『思いやりがない』『気遣いがない』と言われることがあると思う。でも、それを自分の人間性のことだと思って、必要以上に落ち込まんでええよ。職人が言う『思いやり』や『気遣い』は、先読みのことだから」
「先読みは、意識して周りを注意深く観察し、目的やゴールを持って取り組めば、おのずとできるようになる。思いやりも気遣いも、持って生まれたものではなく、努力して身につけられるものだから」
そう教えてくれました。
ちょうどその頃、僕の後輩にあたる新人さんが、「自分には優しさが足りないのだろうか」と落ち込んでいました。しかし、専務の言葉を聞いて、少し元気を取り戻したようでした。
土木の仕事は、常に危険と隣り合わせです。そのため、現場では強い言葉をかけられることもあります。しかし、その言葉の意味を伝え、こうして上司がきちんと心のケアまでしてくれることも、僕たちが成長していくための大きな糧になっています。
後半の作業は・・
9月の面談で専務からいただいた言葉がとても印象に残ったので、紹介させてもらいました。
それでは、現場での作業に話を戻します。ここから僕は、実は重機を操作していました。そこで今回のブログの最後は、「オペさんへの道」の番外編にさせてください。
重機に乗り、シャクを使って、コンクリート打設に向けてセメントを混ぜていきます。これが、ものすごく難しい作業でした。
船の中のセメントをすくい上げて混ぜる。それを何度も繰り返します。シャクを横に動かすと、セメントが飛び散るだけでなく、うまく混ざりません。縦にすくい上げ、船の中でセメントを回転させるように重機を操作していきます。

頭では動かし方を理解しているつもりでも、なかなか思いどおりに操作できません。普段使わないさまざまなところに力が入り、毎日のように筋肉痛になりました。
そのほかにも、コンクリートを打設する際には、自分たちでつくったコンクリートを重機で型枠まで運びます。傾けるとこぼれる。揺らしてもこぼれる。作業をしてくれる人のもとへ、こぼさないよう丁寧に届けていきます。
今回も先輩方から、やり方という「引き出し」と、次に向けた宿題をたくさんいただきました。
まとめ
今回は、入社してすぐに携わった現場とよく似た工事内容だったこともあり、当時を振り返る中で、いろいろな思いが込み上げてきました。
ただ、一つはっきりと言えることがあります。今の自分の成長の背景には、入社した頃に教わったことを、今も変わらず意識して取り組んできた積み重ねがあるということです。
新人の頃も、重機に乗るようになった今も、作業の内容は違っても、仕事をするうえで意識することは一貫しています。
「落ち着いて、丁寧に」と「先読み」です。
専務が示してくれた道標を頼りに、一歩ずつ進んできたからこそ、1年半前の自分と比べて、確かな成長を実感することができました。
これからも挑戦し、そこで新しい課題をもらい、また挑戦する。その繰り返しの中で、これからも多くの成功体験を積み重ねていきたいと思います。

まとめの最後に。現場から見えた景色を1枚。(撮影者:僕の後輩社員)
逆光で神秘的に見えるうろこ雲。
上司アドバイス
今回は、下手間から重機の操作まで幅広い作業を経験したことで、仕事の見え方や視野が大きく広がったと思います。
「今、何が求められているのか」「次に何が求められるのか」を常に考えることは、とても大切です。まさに先読みですね。
重機に乗る人に考えていてほしいのは、「作業している人を、どうすればもっと楽にできるか」「人が行う作業の負担を、どうすれば減らせるか」ということです。
今回、下手間と重機操作の両方を経験したからこそ、きっと感じられたことがあったと思います。この経験を次の仕事に生かし、さらに成長してくれることを楽しみにしています。
